映像のダイナミックレンジとは?

引用:SteadyChaos Productions
映像におけるダイナミックレンジは「最も明るい部分」と「最も暗い部分」の幅を指します。
幅が広いほど階調がなめらかになり、自然で美しい映像になります。
窓の外の強い光と暗い室内の家具を同時に描写させるためには、広いダイナミックレンジが必要です。
逆にダイナミックレンジの幅が狭いと「白飛び」や「黒つぶれ」が発生してグラデーション(階調)が失われます。
本来、ダイナミックレンジは映像と音の両面から理解するのが理想ですが、本記事では文字数の都合から映像のダイナミックレンジに絞って解説します。
動画で観るHDRとSDRの違い
HDRは、“エイチ・ディー・アール”と読みます。
High Dynamic Range(ハイ・ダイナミック・レンジ)の略です。
SDRは、“エス・ディー・アール”と読みます。
Standard Dynamic Range(スタンダード・ダイナミック・レンジ)の略です。
HDRは2010年代以降、SDRよりも表現の幅を広げる技術として注目されてきました。
HDRでは白の領域が広がり鮮やかさが増し、黒もより深く引き締まります 。
SDRとの比較映像を観ると、その差は一目瞭然です。
次の動画をご覧ください。
※HDR映像は、スマートフォンでの視聴をおすすめします。2021年以降に発売された多くのモデルがHDRに対応しているためです。
引用:HDR VS SDR Comparison by SteadyChaos Production
こちらの2:00~のCG映像はHDRとSDRの違いが明白に表れています。
SDR(右)は早い段階で黒潰れしていますが、 HDR(左)は光と影を広くなだらかに再現できています。
次はアニメーションの比較です。
引用:Suzume HDR vs SDR [4K] by Prince 7
HDRは光の再現性が高く、色彩表現が豊かであることがわかります。
一方SDRは黒から白の表現があいまいで、眠たい映像に見えます。
そして、アニメーションスタジオの原版に近いのは、明らかにHDRです。
このように、CGやアニメではHDRの効果が表れやすく“制作者の意図に近い光と色”を再現できるメリットがあります。
HDRの注意点
ですが、すべての映像にHDRが最適とは限りません。
HDRは「黒をより黒く、白をより明るく」できますが、現実以上に派手に見えることによる「弊害(へいがい)」もあります。
例えば、制作者がHDR用に過度に調整しすぎると、色やコントラストが人工的に感じられるケースがあります。
※この違和感はディスプレイの性能によって変わります。
例として、先ほど紹介した動画の8:30~のシーンをご覧ください。
引用:HDR VS SDR Comparison by SteadyChaos Production
この動画はゲーム『Call of Duty: Modern Warfare』(2019年)の一部で、ウルジクスタン解放軍のリーダーが、CIA特別行動部の工作員に協力を要請する重要な対話シーンです。いかがでしょうか?
私はHDRよりもSDRの落ち着いたトーンの方が、映画的なリアリティを感じます。
「SDRは暗い」と感じる方も多いと思いますが、光量を落としキャラクターの表情を曖昧に見せることで、HDRよりもシーンにマッチした緊張感を表現できていると思います。
HDRは必ずしも「リアルさ」と一致するわけではなく、テーマや演出意図に応じた使い分けが必要です。
私は、テーマや演出意図に応じてHDRとSDR使い分ける「ハイブリッド設計」志向しています。
次にそちらの例を紹介します。
HDRとSDRの使い分け
映画制作では「全編をHDR」とするのではなく、鮮やかに見せたいシーンをHDRで際立たせ、その他は極力SDR調にまとめる“ハイブリッド設計による演出”が行われています。
一例として、ポール・トーマス・アンダーソン監督の『ファントム・スレッド』はその好例で、フィルムらしい柔らかさ(SDR調)を保ちつつ、華やかなシーンでHDRの効果を自然に活かしています。
引用:PHANTOM THREAD – Official Trailer [HD] by Focus Features
まとめ …の前に
執筆者からのお勧め記事をご紹介します
なぜRGBが動画編集の基本色なのか?光の三原色をやさしく解説
また、ご要望があれば「音のダイナミックレンジ」についても執筆いたします。
映像と音、両方の観点から理解を深めることで、より完成度の高い動画作品づくりにつながります。
ダイナミックレンジのまとめ
ダイナミックレンジは、映像表現の“光と影の再現性を決定づける要素”です。
HDRはその表現幅を飛躍的に拡張しましたが、必ずしも全ての場面で最適とは限りません。
作品のトーンや演出意図に応じて、ダイナミックレンジの幅(HDRとSDRの特徴)を使い分けることで、映像に一層の“情緒とリアリティ”をもたらします。
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