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映像制作の革命児!「ENGカメラ」の歴史を紐解く
撮影

[カメラ]映像制作の革命児!「ENGカメラ」の歴史を紐解く

ogami

ogami

2026/01/16

ENGカメラの写真

映像制作の現場で耳にする「ENG」という言葉。今ではスマートフォン一つで綺麗な映像が撮れる時代ですが、かつて「映像と音を同時に、しかも手軽に記録する」ことは、放送業界における革命的な出来事でした。今回は、現在の映像制作の基礎を作った「ENGカメラ」について、その歴史と仕組みを解説します。

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1. ENGとは何か?

ENGとは「Electronic News Gathering *1」の略称です。日本語に訳すと「電子的ニュース取材」となります。

ここで言う「電子的(Electronic)」とは、「フィルム」の対義語として使われた言葉です。ニュース取材に限らず、テレビ番組全般の「番組素材の収集(Gathering)」システムそのものを指します。もっとシンプルに定義すると「ビデオカメラとビデオテープレコーダー(VTR)を組み合わせたシステム」のことです。当初はカメラとレコーダーがケーブルで繋がれた別々の機材でしたが、やがて技術の進化により「VTR一体型ビデオカメラ」が誕生しました。

これらを総称して、番組素材となる映像と音声を収集するシステムを「ENG」と呼びます。

2. ENGカメラが生まれた背景

ENGシステムが登場する以前、テレビのニュース取材は「フィルム」で行われていました。当時の現場は、現代では想像できないほどの手間がかかっていました。

現像が必要: 撮影したフィルムは局に持ち帰り、現像しなければ映像を確認できない。

同時録音が困難: フィルムカメラは駆動音がうるさいため、音声は別のテープレコーダー(デンスケなど)で録音し、編集時に同期させる必要があった。

つまり、カメラ・映像記録・音声記録がすべてバラバラに行われていたのです。「今撮った映像がすぐに確認できない」「音合わせが大変」という制約は、一分一秒を争うニュース現場において大きな課題でした。

3. ENGカメラができるまで

ざっくりとした説明になりますが、ENGシステムの実用化には、日米のメーカーによる技術競争がありました。

まず特筆すべきは米国のRCA社です。1976年に発売された「TK-76」は衝撃に強く、電源を入れてすぐに撮れるタフな設計で、「ビデオカメラは繊細で外では使えない」という常識を覆しました。これがニュース現場でのフィルム廃止を決定づけたと言われています。

ここから日本企業が躍進します。まず、池上通信機は「HL(Handy Lookie)」シリーズで圧倒的な高画質と信頼性を実現し、米国の放送局で絶大な支持を得ました。

そして「小型化のスペシャリスト」のSONYが、それまでの巨大だった録画機(VTR)の小型化・規格化で革命を起こします。その流れで1980年代に入ると、SONYがカメラとVTRを完全に一体化させた「ベータカム(ベーカム)」を開発したことで、カメラを肩に乗せるスタイルが生まれ、現在の「ワンマンでも撮影できるENGスタイル」が完成しました。

一言メモ:私が映像制作会社に入社した時はこの「ベーカム」が主流でしたが、ベーカムで収録した音声が素晴らしかったことをよく覚えています。「音の厚み(太さ)」と「クリアさ(S/N比)」において、当時収集していたレコードを大きく上回っていたことを鮮明に覚えています。逆に学生時代はフィルム撮影の現場にいたので、ベーカム映像の品質にはがっかりしました。

4. ENGカメラで何が変わったのか?

ENGの登場で劇的に変わったものが「速度」です。かつてニュースの主役だった新聞は、情報を印刷して届けるまでに半日近いタイムラグがあります。フィルム取材のテレビニュースも、現像の時間が必要でした。しかし、ENGカメラは「撮った瞬間」に映像と音が完成しています。テープを局に持ち帰れば(あるいは電送すれば)、そのままオンエアできます。

具体的には以下の2が大きかったと聞いています。

①圧倒的な速報性

事故事件現場から、生の映像を即座に届けられるようになったということです。

②機動性の向上

1970年代から80年代にかけて、日本中でこのシステムが普及。少人数のクルーでロケ取材が可能になり、番組制作のフットワークが劇的に軽くなりました。

ということで、このシステムがあまりに画期的であったため、ニュース取材だけでなく、ドキュメンタリーやバラエティ、ドラマまで、番組制作の「定番(デファクトスタンダード)」となりました。現在のYouTuberがカメラを持って街に出るスタイルの原点も、この「ENGが始まり」と言えるかもしれません。

5. まとめ

いかがでしたでしょうか?

今では、スマホや一眼カメラで「映像と音を同時に記録する」ことは当たり前ですが、その当たり前の裏には、高度経済成長期の日本の技術者たちが「より速く、より確実に情報を伝えたい」という情熱を注いだ歴史があります。

私たちが普段使っている便利な撮影機材も、先人たちの試行錯誤と歴史の積み重ねの上に成り立っています。その恩恵を受けて、私たちは今日も映像を作ることができている。そのことを忘れずにいたいですね。

映像のフリーランスを目指していますが、流石にENGカメラは敷居が高すぎです…」という方は、お気軽にSTUDIO USの無料個別相談にご参加ください。STUDIO USの受講生には、チャットや個別レッスンにて、フリーランスに最適な、そして時代にマッチした機材を紹介しています。
*1:Gathering」は「素材を集める」という意味です。「撮ったらすぐに放送できる」「現場から素材を素早く集める」という、ニュースの速報性を表しています。
💬*1の補足:Gathering」の別の意味として、私のカメラマンの師匠から「カメラ・VTR・録音を1つしたのがENG。だからGatheringには機材の『組み合わせ(集合)』という意味の方が現場感覚に近い」と教わりました。当時の現場の人々には「機材が一つに集約された驚き」という実感としての解釈もあったようです。

この記事を書いた人

ogami

ogami

STUDIO US講師。映画撮影→映像制作会社を経てiPhone元年にIT企業に転身しアプリ開発PMを担当。音響・モバイル・ITに明るいフリーの動画制作者。

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