Suno V5の衝撃

映像編集の序盤や終盤で多くの制作者が悩むのが「BGMの選定」ではないでしょうか。
「イメージに合う曲を求めてストックサイトを彷徨う…」そんな経験は少なくないと思います。
私は長年「Artlist.io」と「Musicbed」2つのストックサービスを愛用してきましたが、その課題は“工数(楽曲を探す時間)”でした。
しかし2025年“音楽生成AI「Suno」がV5へと進化”したことで、その常識が覆されました。
なぜなら“探す”よりも“作る”方が早いから。そして“制作の自由度が高い”からです。
従来の音楽生成AIは「音のパターン」を並べる程度の印象をぬぐえませんでした。
ですが、Suno V3の登場からその印象は薄れ、Suno V4で“音楽としての成立”を体感しました。 そして、V5では“人の呼吸”を感じる完成度にまで達しました。
AIが人間を目指すことが最善かはわかりませんが「Suno V5」は確実に“人に近づく”という形で進化しています。
Suno V5:6つの進化と改善点
① ボーカル表現の改善
前バージョンのV4.5までは、声質や語尾の処理に多少の違和感を感じていました。
V5ではそれが大きく軽減し、ブレスの置き方も自然になりました。
特に“コーラスの立体感と密度”には驚かされます。
② メロディラインの進化
メロディラインも格段に向上し、旋律に“情緒と抑揚”が感じられます。
単なるBGMではなく“映像の物語を背負える曲”。そのレベルに達したと思います。
③人間的なリズムの溜めと抜き
V5ではリズムに“人間的な揺らぎ”が加わりました。“メトロノーム的な均一感”が薄れ、グルーヴに“余白”を生んでいます。
個人的にはこの進化を待っていました。映像制作者にとって、カット編集や動きの“間”と同期する自然なリズムは極めて重要だからです。
AIが映像のテンポや演出意図を理解して作曲する日も近いでしょう。
④ 楽曲の尺
V4までは最大4分尺でしたが、V5(V4.5以降)では品質を維持したまま“最大8分”の楽曲を生成可能になりました。「風景を長時間流す動画」などで恩恵があると思います。
⑤ 最大12ステムのエクスポート
実際にはV4.5からですが、制作者にとって大きな恩恵となるのが「最大12のステム(パート別音源)のエクスポート」です。
ベース、ドラム、ボーカル、パッド音などを個別に扱えるので、動画編集ソフト(Premiere ProやDaVinci Resolve)上で、レベルやバランス(音量とパン)の調整が可能になりました。
これは、“音楽の完成品”としてだけでなく“音楽を編集素材として扱える”という点で革新的です。
私はこの機能の影響で、V4.5以降に「Artlist.io」からの本格的な移行を始めました。
⑥ カバー曲の生成
最近YouTubeでも既存曲のカバー音源(Fake Music)を頻繁に見かけるようになりましたが、その多くは“SUNO V5の新機能”によるものです。V5は編曲能力も優れています。
著作権上の問題を抱えているため、スクール運営のブログ記事として具体的な手順は控えますが、記事の後半でアレンジ曲の事例を紹介します。
Suno V5のサウンド傾向
Suno、に限らず音楽生成AIは、エレクトロニックなテクノ/Lo-Fi/アンビエントなどのシンセ中心のサウンドを得意としています。
そして、V5では 「V4-V4.5」 と比べて“各楽器の厚みと迫力が増し”表現力がさらに高まりました。
一方で、バンドアンサンブルの “生演奏感” はまだ発展途上と感じます。
ギターのピッキングやドラムのオフビートなどの“人間臭さ”の再現はV6以降に期待します。
Sunoの制作手順:「楽曲の脚本」を書く
映像制作者にとって、Sunoでの作曲は「楽曲の脚本作業」です。
ここでは、楽曲生成の流れとクオリティを左右する主要な設定項目を紹介します。
モード選択:Simple と Custom

Simpleモードは、ジャンルや雰囲気を文章で伝えるだけで、楽曲も歌詞も自動生成です。手軽に始めるならこちらをおすすめします。
Customモードは、歌詞を自作し、楽曲のスタイルを細かく指定したい上級者向けです。右上のモデルは“V5”を選択します。
クオリティを操る2つの設定項目

Weirdnessメーター(奇抜度):AIの“創造性”を調整できますが、上げすぎると音楽として破綻するので、控えめがおすすめです。
Style Influence(スタイル忠実度):プロンプトで指定したスタイルを“どれだけ忠実に再現するか”を設定します。100%に近づくほど忠実に、0%に近づくほど指定スタイルから遠くなります。
プロンプト(音の脚本)を実際に書いてみる
それでは、本記事用に生成した楽曲とそのプロンプトを紹介します。最初は動画制作に必須のインストから。モーショングラフィックスやイベント系OPで使いやすいダブステップ強めのEDMを生成しました。
まず“Simple”か“Custom”のモード選択をします。まずは“Simpleモード”で、インストゥルメンタル設定(on_instrumental)を選択します。
melodic synth riffs, deep, futuristic, epic cinematic build-up, chopped and glitched female vocals, deep heavy sub-bass, driving drums, complex, female vocals, complex drop, massive dominant growling bass, dubstep, energetic dubstep.
🎵 生成された楽曲がコチラです。
※ V5で生成したオリジナル音源は高音質(CD音質)ですが、今回掲載した4曲は全てブログ用として1/10程度に圧縮しています。
次に、私が青春時代に影響を受けすぎた90年代のHIPHOP-Old Schoolを生成します。こちらも“Simple”で行います。
Old school hip-hop track inspired by 90s East Coast sound.
Boom bap drums, deep bassline, vinyl crackle, DJ scratches.
Lyrical rap about loyalty and street wisdom.
Tempo: 92 BPM, mood: gritty and nostalgic.
🎵 生成された楽曲
次はCITY POPの例ですが、80年代をリアルに生きた人達に向けた楽曲にしたかったので、“Custom”で細かく指定しました。
[Intro]
Neon Skyline
Neon Skyline
[Verse 1]
眠らない街の光 すり抜けてくハイウェイ
FMから流れる声が 遠い記憶をくすぐる
ガラス越しの月明かり 滲むシルエット
あの夜の約束が ふとよみがえる
[Pre-Chorus]
冷えた風が頬を撫でても
あの日の温度をまだ覚えてる
[Chorus]
Neon Skyline 今も揺れてる
渋谷のリズムに心をあずけて
過去と未来が交わる夜に
もう一度、夢を見よう Neon Skyline
[Verse 2]
流れる景色は 誰かのストーリー
信号が赤に変わるたび 立ち止まる想い
窓に映る横顔が 少しだけ大人びて
言葉より確かなもの 探していた
[Pre-Chorus]
消えかけたラジオのノイズ
それさえも懐かしいメロディ
[Chorus]
Neon Skyline 君を想えば
夜空のネオンが優しく滲む
時代(とき)を越えて響くメロウな音
今も胸の奥で Neon Skyline
Title: Neon Skyline
Style: City Pop, 80s-inspired Tokyo sound, modern J-pop sensibility
Description: Smooth and nostalgic city pop track inspired by 1980s Tokyo nights — blending vintage synths, electric piano, slap bass, and clean guitar with modern production clarity.
Mood: dreamy, romantic, slightly melancholic but hopeful.
Lyrics language: Japanese
Theme: A fleeting night drive through neon-lit Tokyo, where past and present blur.
Vocal: Female, soft yet confident, emotional tone.
🎵 生成された楽曲
また「改善点の⑥カバー曲の生成」でお話した“Cover機能”を使って、ソウルアレンジのプロンプトに置き換えると、このようになります。
🎵 生成された楽曲
まとめ
映像制作者である私にとっては、作曲は“憧れのスキル”でしたが、いまやAIがその大きな壁を取り払いつつあります。
そして、Sunoのような音楽生成AIを使用する上で問われるのは、「音を鳴らす力」ではなく「音を構想する力」です。ジャンル、テンポ、ムード、世界観を的確に言語化できる人ほど、意図通りの楽曲を生み出せます。
そして「言葉で音を描き、奏でる時代」の到来によって、少なくとも今現在においては、“動画制作者が得をする時代”です。AIを“脅威”ではなく“新たな筆”として受け入れ、武器にすること。それが今の“映像制作者に求められる感性”ではないでしょうか。
私はAIの専門家ではありません。一介の動画制作者ですが、“動画制作の現場が大きな転換期”を迎えていることを肌で感じています。これからの動画制作そして映像表現は、“これからが一番面白い”かもしれません。
もし、動画制作・動画編集にご興味をお持ちの方がいらっしゃいましたら、お気軽に STUDIO USの無料個別相談 にご参加ください。



